Netflixで配信開始されるやいなや、87ヶ国以上でTOP10入りを果たし、全世界で大ヒットを記録している『モンスター:リジー・ボーデンの物語』。 視聴者の間では「凄まじい傑作」と称賛する声が上がる一方で、海外のSNSやレビューサイトでは、そのあまりにも過激な演出や衝撃的なラストシーンを巡って「やりすぎだ!」「意味がわからない」と大炎上する事態となっています。
一体なぜ本作はこれほどまでに物議を醸しているのでしょうか?そして、物語のラストで描かれた衝撃的な展開にはどんな意味が込められていたのでしょうか? 本記事では、検索者が最も気になっている「大炎上の理由」と「ラストシーンの真意」について、130年以上前の史実事件の背景を交えながらガチ考察していきます。
『モンスター:リジー・ボーデンの物語』とは?作品概要とあらすじ
ライアン・マーフィーが手掛ける大ヒットシリーズ第4弾
本作は、実録犯罪を描き世界中で旋風を巻き起こしてきたNetflixの人気アンソロジー『モンスター』シリーズの最新作(シーズン4)です。ヒットメーカーのライアン・マーフィーとイアン・ブレナンが手掛け、シリーズ初となる「女性のシリアルキラー/殺人容疑者」を主人公に抜擢したことで配信前から大きな注目を集めていました。 主人公のリジー・ボーデン役には名優ウォーレン・ベイティとアネット・ベニングを両親に持つエラ・ビーティが起用され、共演にはヴィッキー・クリープス(メイドのブリジット役)、レベッカ・ホール(継母アビー役)、チャーリー・ハナム(父アンドリュー役)ら実力派キャストが名を連ねています。
斧で両親を惨殺?19世紀のアメリカを揺るがした衝撃のストーリー
物語のベースとなっているのは、1892年のアメリカ・マサチューセッツ州で実際に発生した未解決事件「リジー・ボーデン事件」です。 富裕層の厳格な家庭で窮屈な暮らしを強いられていた娘リジー・ボーデン。屈辱と不満が渦巻く邸宅のなかで、やがて父親と継母が斧(手斧)によって惨殺される凄惨な事件が勃発します。裕福な邸宅の閉じられた空間で繰り広げられる家庭内の抑圧、性、権力、そして歪んだ復讐劇がスリリングかつ耽美的に描かれていきます。
なぜ海外SNSで大炎上?物議を醸した2つの過激シーン
100年後の連続殺人鬼「アイリーン・ウォーノス」と交差するラストシーン
海外のSNSやレビューサイトで最も批判と困惑を呼んだのが、物語の終盤・ラストシーンの展開です。 史実では19世紀末を生きたリジー・ボーデンの物語であるにもかかわらず、終盤には約100年後の20世紀末に実在した女性連続殺人鬼「アイリーン・ウォーノス」が登場し、リジーと時空を超えて交差するファンタジックかつ異色な演出が描かれました。これに対し、視聴者からは「実在の事件を扱っているのに創作が行き過ぎている」「フィクションだとしても意味がわからない」「シネマティック・ユニバース化しようとしているのか」といった困惑と怒りの声が相次ぎ、大炎上へと発展しました。
格式高い食卓で繰り広げられる「悪趣味なディナー(牡蠣)」の恐怖
もう一つ視聴者に強いショックを与えたのが、ボーデン家の格式高い食卓で繰り広げられる「悪趣味なディナーシーン」です。 生臭く生理的な不快感をあおるような「牡蠣(カキ)」を食す場面をはじめ、登場人物たちの狂気やグロテスクさを生々しく強調した演出に対し、レビューでは「強烈すぎる」「見ていて吐き気がした」と賛否両論が巻き起こりました。

【ネタバレ考察】ラストでアイリーン・ウォーノスと交差した真の理由
「女性にこんな残酷な殺人は不可能」という時代の偏見への痛烈な皮肉
では、制作陣はなぜこれほどまでに物議を醸す演出を盛り込んだのでしょうか?その最大の理由は、19世紀当時の社会構造に対する強烈な皮肉にあります。 当時のアメリカ社会には、「日曜学校の教師を務めるような裕福で良家のお嬢様が、斧で親の頭蓋骨を割るような野蛮な真似ができるはずがない」という強力な性差別的バイアスが存在していました。劇中では、この「女性=無害・清純」という偏見や侮蔑こそが、真犯人をまんまと野に放つ結果を生んだという歴史の滑稽さと皮肉が表現されています。
時代を超えて響き合う「女性たちの抑圧と怒りの連帯」
19世紀の良家のお嬢様リジーと、20世紀末の娼婦であり連続殺人鬼となったアイリーン・ウォーノス。一見すると接点のない2人ですが、「男性優位の社会構造や暴力によって虐げられ、極限まで抑圧された末に爆発した女性」という共通点を持っています。 制作陣は歴史的な事実をそのままなぞるのではなく、時代を超えた「女性たちの抑圧と怒りの連帯」をシンボリックに表現するために、あえて2人を交差させるというパンクロックで過激なアプローチをとったのだと考察できます。
リジーとメイド・ブリジット(マギー)を結ぶ絆と復讐劇のグラデーション
本作では、屋敷でともに支配と暴力を受けていたリジーと、アイルランド系メイドのブリジット(マギー)の関係性も重要な軸となっています。 単なる主従関係を超えて芽生える密やかなシスターフッドや歪んだ絆、愛憎のグラデーションが丁寧に描かれており、屋敷の重苦しい抑圧から逃れるための「共謀と復讐」へと二人を駆り立てていく心理的動機が物語に深みを与えています。

史実『リジー・ボーデン事件』の真実:なぜ130年以上も未解決なのか?
1892年8月4日に起きる実際の斧による二重殺人事件の全貌
史実の「リジー・ボーデン事件」は、1892年8月4日の猛暑の朝、マサチューセッツ州フォールリバーで起きました。 富豪の銀行家アンドリュー・ボーデンと継母アビー・ボーデンが、自宅内で手斧(ハチェット)によって顔面や後頭部を多数回叩き切られ、無残な遺体となって発見されました。事件当時、邸宅内にいたのは次女のリジーとメイドのブリジット・サリヴァンの2人のみであり、真っ先に疑いの目がリジーに向けられました。
なぜ無罪に?オール男性陪審員と決定的な証拠不十分の裏側
警察の捜査により、リジーには継母との財産をめぐる深刻な不和や、事件直前に青酸を購入しようとしていたことなど、多数の怪しい状況証拠が存在していました。 しかし、血まみれの服や明確な凶器が特定できなかったこと、そして当時の裁判の陪審員が「全員男性」であったことが運命を分けました。男性陪審員たちの間には「上流階級の若い女性がそのような凄惨な殺人を行えるはずがない」という強い心理的バイアスが働き、わずか短時間の審議で「無罪判決」が下されることとなったのです。
無罪判決後のリジーの孤独な人生と町での噂
法的には無罪となったリジーですが、世間や地元住民からの疑いの目が消えることはありませんでした。「リジー・ボーデンは斧を取り、お母さんを40回打った…」という有名な童唄(なわとび唄)が新聞や街中で広まり、彼女は一生「親殺しの殺人鬼」という噂と恐怖の目で見られ続けました。裕福な遺産を相続したものの、街から孤立し、村八分のような状態で1927年に66歳で死去するまで静かに暮らしました。

まとめ:過激なフィクションの裏に隠された現代への問題提起
単なる悪趣味ではない!『モンスター:リジー・ボーデンの物語』の真価
『モンスター:リジー・ボーデンの物語』は、一見すると歴史を歪曲した過激なフィクションや、炎上を狙った悪趣味なドラマに見えるかもしれません。 しかし、その奇抜な演出の裏側には、19世紀から現代に至るまで根強く存在する「性差別」「社会的な抑圧」「人間の狂気」に対する鋭い批評とメッセージが隠されています。ラストシーンの真意や史実の背景を理解した上で鑑賞すると、単なるホラーや実録サスペンスにとどまらない、重厚でパンクロックな傑作として作品の真価を味わうことができるでしょう。
