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元消防士が変えたい日本の防災対策:兼平豪氏の挑戦とビジョン

個人

兼平豪 別名RESCUE HOUSEタイチョーは、株式会社VITA代表取締役。元レスキュー隊員として「助かる命を助けるために」をテーマに、防災YouTubeチャンネル「RESCUE HOUSE」を運営。災害現場のリアルな声とともに、災害大国ニッポンならではの「気づき」を日々発信しています。YouTube登録者44.3万人。

兼平豪氏の経歴

兼平豪(かねひらつよし)
出身:大阪市(現住所同じ)
学歴:近畿大学
誕生日 11月15日
年齢・身長・体重 非公開
家族 タイチョー、奥様、息子さん、娘さん
大阪市消防局で救助隊員/救急予備隊員/消火隊員を経験
・大阪市消防局救助代表選出(約3500名中80名選出)
・人命救助による功績表彰受賞
・大阪市消防局 退局
・株式会社VITA設立/代表取締役
・YouTubeチャンネルRESCUE HOUSE 開設
・日本民間防衛/最年少理事
・防災対応専門家/防災アドバイザー
・書籍「消防レスキュー隊員が教える だれでもできる防災事典」刊行
・保有資格:防火,防災対象物点検資格者/消防設備点検資格者/応急手当普及員/防災

   

RESCUE HOUSEの兼平豪氏:災害から命を守るためのメッセージ

チャンネル登録者数44.3万人(2025年2月9日時点)のYouTubeチャンネル『【消防防災】RESCUE HOUSE レスキューハウス』は、元レスキュー隊員の防災アドバイザー・兼平豪さん自身が“タイチョー”として出演する、防災や急病医療、障がい福祉について発信しているメディアです。
多くの火災・災害現場での体験をもとに、助かる命を助けるための対策方法を伝授しています。兼平さんが消防士を辞めてまで、情報発信する理由や日本の防災対策、日頃から身につけておきたい防災対策について話を聞きます。

緊急時に命を守る“選択肢の棚”を増やすため、防災をアップデート

防災に関する情報発信を始めたきっかけや目標は?

兼平
兼平

「防災対策、何をしていますか?」と質問をすると、皆さん「防災グッズを持っている」と答えるんです。しかも、そのほとんどが地震対策なんですよ。初めて耳にしたときは「ちょっと、待て。何を言っているんだ!?」と驚きました。災害は地震だけではなく、大雨や台風などの災害もありますし、身近な災害にも備えてほしいんです。もっといえば、僕にとっての防災は、交通事故から命を守る、子どもの熱性痙攣から命を守る、精神的な病から命を守る、電気火災から命を守る…これらすべてなんです。このように身近な危険ってすごくあるのに、日本の防災は不思議と地震が対象なんですよ。みなさんの意識が、防災=地震対策になっているので、まず、今ある防災をアップデートしたいと思ったことがきっかけです。現状は消防士と一般市民の間に、大きな情報格差があるんです。消防士だったら、あらゆる場面での対処方法がパッと判断できます。でも、一般の方は詳しくわからないでしょうし、誤った判断をしてしまう可能性もあるんですよね。

兼平
兼平

そんな想いがあったので、まず独立したときに、日本の経済を支えている上場企業から中小企業まで、「防災を変えましょう」と声をかけてみたんです。でも、誰ひとり話を聞いてもらえませんでした。消防の制服を脱いだら、誰も話を聞いてくれないんです。これはすごくショックでしたね。そこで、聞いてもらうためには「僕自身に影響力・発信力がいる」と考え、YouTubeで『【消防防災】RESCUE HOUSE レスキューハウス』の配信を始めることにしたんです。事故や災害で大切な人の命を失ってしまったとしても、僕は泣いて終わらせてしまったらダメだと思っています。だから、それをみなさんでも判断・対処できるように、いろいろな危険から命を守る教材を後世に残したいんです。そんな想いで動画を発信しています。

防災を伝えるうえで、心がけていることがあれば

兼平
兼平

人が亡くなる、亡くならないという瀬戸際の対処法を伝えているのが『RESCUE HOUSE』です。日本で唯一、ここを発信しているのは僕だけ。防災のチャンネルで「こういう防災グッズが重要」と、グッズをメインに紹介するメディアもありますよね。でも僕は、それは違うなと思っています。それって災害から生き残ったあとの話であって、それよりも、生き残るまでの選択肢を得ることが先決なんですよ。でも残念ながら、今の日本にはそれが足りないんです。消防士がそばにいたら、救命率は上がる可能性が高いんです。なぜなら消防士は必要な知識を習得しているから。でも、彼らは命を助けに現場へ出動していて、発信できないんです。だから、僕みたいに消防を辞めた人間が、自分の命を守る方法、大切な人の命を守る方法を発信する必要があると考えています。それでも助けられない命を、消防隊に託す活動をしているんです。

兼平
兼平

僕が伝えたいのは、緊急時にとる行動です。1分1秒を争うなか、あなたの大切なものや人を守るための選択肢は3つぐらいしかないんです。その選択を間違えてほしくないと思います。そのために僕がしていることは、みなさんの命を守る“選択肢の棚”を増やす作業なんです。対処法を頭の片隅に置いておくと、いざというときに「あいつ、あんなこと言っていたな」って、キーワードだけでも出てきますよね。例えば「家電火災のときに落とすブレーカーはこれなんだ!」って知ってもらえるだけでいいんですよ。

おっしゃるとおり、助ける人、伝える人の両方が必要ですね。レスキュー隊員の方々には救助をしっかりしていただいて、正しい情報を発信すべき役割を兼平さんのような方が担うという。

兼平
兼平

正直、僕は消防を辞めた感覚はないんですよ。「『RESCUE HOUSE』で何が自慢ですか?」と聞かれたら、僕は「日本で一番、消防本部の方から応援メッセージをいただけること」と答えると思います。消防士のなかには途中で辞職される方もいますが、大好きな消防士を大好きなまま辞めたのって、珍しいと思っています。消防の制服を脱がないとできないことがあっただけで、僕としては違う部署で同じことをやっている気持ちなんです。

『全て見せます。』(4:54:43)

助かる命を助けるために「命を守る教材を後世に残したい」、元レスキュー隊員の心優しい挑戦

ここ数年、地震や台風、洪水といった災害が増えています。こうした自然災害にはどのように対処すればいいのか?

兼平
兼平

自然災害で押さえておいてほしいポイントは2つあります。1つ目は、地域のハザードマップを必ずチェックしておくこと。これは、プロが調べてくれているので、ある程度の危険予想ができます。まず危険がどこにあるかを理解しておくことが大切です。そして2つ目が避難場所を知ることです。災害が迫ると、警戒レベルが絶対に出るので、その警戒レベルに合わせて避難する場所を明確にしておくことが重要です。ちなみに、避難場所と避難所の違いってご存知ですか?避難場所は、命が奪われる危険性があるときに命を守る場所のことです。そして避難所は被災して家に住めなくなったあと被災生活をする場所です。まずは避難場所を把握しておきましょう。

兼平
兼平

それから、川や崖から離れている場所、マンションの高層階など、無理して避難しなくていい場所や場合もあります。これは「無理して避難しなくていい」という心の安全につながるんです。「やばい、逃げろ!」と、大雨のなか、外へ出て避難するのは逆に危険なリスクを招く場合もあります。だから、事前に知っておくことが大切なんです。例えば、近所の人が「あそこのビルまで逃げろ!」と言って動き出すと、追従性の法則といって、事前に調べていない人は“その急げ”に続いてしまうんです。これはめちゃくちゃ危ないです。事前に調べていたら「調べた結果、上の階に行ったほうが安全」と言えるじゃないですか。そうすれば、周りの人も安心して行動できますよね。

ユーザーの方とのやり取りで、印象に残った防災に関するエピソードは

兼平
兼平

『RESCUE HOUSE』を立ち上げたころに、津波で被災して娘さんを亡くされたお母さんから「タイチョーさんの活動が、世界中に広がることを願っています」というメッセージをいただきました。そのときのやり取りを通じて、「ひとりでも救える命があるのなら、たとえおもしろくないコンテンツでも一生発信していきたい」と誓ったんです。そのことは忘れられないエピソードのひとつですね。大切な人の死って、どんなことをしても絶対に戻ってこない。それを守るため、大切なことを学ばせていただきました。

そして彼は続けた。

助かる命を助けるために、僕はこれからも発信を続けていきます。今、日本の自殺率の高さが社会問題となっています。孤独死なども含め、あらゆる災害や地震だけじゃなくて、いろいろなリスクが日本の国を危なくしていると思いますが、10代〜30代の死因のトップが自殺なんですよ。それについて「どうして?」と、全然納得がいかないので、助かる命を助けるために発信していきます。『RESCUE HOUSE』にも、年間数千件以上のSOSが集まるんです。「私もこういうことで苦しんでいる」とか、「私はこういうことで大切な命を失った」とか。「死を選択することが楽」だと思うぐらいつらい想いをされている方が、世の中にいっぱいいることを知りました。そこで、この人たちをどうやって守れるんだろう?と考えるようになり、障害者総合支援法のもと障害福祉事業を始めたんです。対象となる方は、生きる価値がないと自分で思っている方や引きこもりの方、それから精神的な心の病を持っている方などです。そういった方々が社会に出るために準備する場所を作って、日本全国に普及していきたいと思っています。


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